ベトナムマーケットレポート(3月21日作成)
竹内浩一(Japan Securities Incorporatedアナリスト)
① 【市況】ベトナム株。上昇トレンド継続中
ホーチミン証券取引所のVN指数は3月14日の433.86ポイントから3月21日の445.77ポイントまで11.92ポイント(2.75%)高となった。
3月20日、ベトナム大都市部(ハノイ、ホーチミン市)の消費者物価指数(CPI)が発表された。ハノイは前月比0.19%増、ホーチミン市は同0.12%増で、直近19ヶ月で最低水準となった。首都ハノイと商都ホーチミン市のインフレ低下を受けて、株価は上昇トレンドを継続している。今週末には3月の全国CPIが発表予定で、仮にインフレ沈静傾向が確認されれば、大きな株価サポート要因となるだろう。
また、ビン中銀総裁は(ベトナムの)外貨準備高は年初2ヶ月で20%増、昨年1年間で50%ほど増加したと発表した。実際の金額は未発表。IMF(国際通貨基金)では、2011年半ばの(ベトナムの)外貨準備高は165億米ドル程度と推定している。
外国人投資家は3月1日、5日に大幅純(ネット)売り越ししたものの、以降は買い越し基調が続いている。
《参考グラフ:外国人売買動向、単位:10億ドン、期間:3/1~3/20》

為替相場は1万ドン当たり40.30円(3月21日現地時間13時/YAHOO!ファイナンス)。
② 【トピックス】日系小売業。ベトナム進出を加速
成熟化した日本の人口減少や少子高齢化、または円高傾向(直近は円安に振れているが)およびベトナム不動産市況の低迷を支援材料に、日系小売業のベトナム進出が加速している。
ファミリーマートは、2009年末にホーチミン市でベトナム1号店をオープン後、わずか2年間で店舗数を18ヶ所まで増やした。ファミリマートでは、ベトナム産のコメを使用したおにぎりやサンドイッチなど今までのベトナム小売店には無かった品揃えと24時間営業を売りに拡大中だ。同社は、今後も続々と新商品やサービスを提供し、ベトナム最大のコンビニチェーン店を目指す。
一方、ミニストップ(9946)は、昨年(2011年)末にホーチミン市で現地企業(G7サービスアンドトレーディング社)と提携し、ベトナムでのミニストップのコンビニ(CVS)1号店をオープンした。5年後を目処にベトナムで500店舗展開を目標とする。
また、GMS(総合スーパー)のイオングループ(8267)では、3月2日、岡田元也社長が訪問先のホーチミン市で会見し、向こう10年でベトナムに15億米ドルを投資する計画を明らかにした。イオンベトナムは同日、ホーチミン市(タンフー区)の複合都市区「セラドンシティ」敷地内に、ベトナム1号店となる商業センター「イオン・タンフーセラドン・ショッピングセンター(面積:3万5120平米、総投資額:1億900万米ドル)」を2012年9月に着工し2014年前半に開業すると発表した。販売商品は90%がベトナム製、その他10%が日本など海外から調達する。
岡田社長は、外資小売業に対する規制について、「大手小売業に閉鎖的だったのは過去の話」と語り、チェーン展開の障害にはならないとの見解を示している。同グループは、2014~2015年にかけて、ベトナム北部・中部に同様のショッピングモールを20店舗以上展開することを計画している。
イオングループは少子高齢化で国内市場が縮小するなか、新興国を中心に海外展開を急加速させている。現地に精通した人材を育成するため、今年(2012年)は新入社員の約1/3にあたる千人超を中国と東南アジアの出先や現地法人勤務とする方針だ。同社の香港子会社・イオンストアーズ香港は3月16日に、昨年末時点で中国の香港で38店舗、広東省で20店舗を運営し、純利益は45.4%増の4億500万香港ドル(約44億円)と好業績を発表した。今後は、福建省など香港や広東省以外での出店も検討する。
一方、百貨店(DPS)の高島屋(8233)は、ホーチミン市1区に建設中の大型開発プロジェクト「サイゴンセンター2」に、売り場面積約1万5000平米の「ベトナム高島屋」を2015年に出店すると発表した。ベトナムにはマレーシア資本の「パークソン」、地元資本ビングループ(VIC)の「ビンコムセンター」などの百貨店が既にあるが、日系百貨店としては初のベトナム出店となる。高島屋の海外店舗としては、シンガポール店、台湾店、上海店(建設中)に次ぐ4店舗目となる。高島屋の安田洋子執行役員は、「ベトナムは安定した経済成長を続けており、高級品の潜在市場として大きな魅力がある」としている。シンガポールのコンサルティング会社は、ベトナム消費市場は年率約2.3%で安定成長を続け、規模で世界6位と分析している。
ベトナムは30歳未満が人口の半数を占め、人口8600万人はASEANではインドネシア、フィリピンに次ぐ人口大国だ。経済は伸び盛りで中間層が勃興し、都市化現象で地方から大都市へ人口が移動しつつある。日本の1960~70年代の高度成長期を思わせる条件がベトナム小売市場に整いつつある。日系小売業にはベトナムの高い潜在性は大きな魅力だ。
ベトナムは、2007年にWTO(世界貿易機関)に加盟、2009年からは外資100%の小売り・飲食業の設立が可能になった。だが、外資の場合、投資ライセンスがあれば1店舗目の出店は簡単だが、2店舗目以降は「エコノミックテスト」という事実上の出店規制、いわゆる「2号店問題」がある。ところが、ベトナムは2010年3月にTPP交渉参加を表明し、協定成立に前向きだ。TPPは関税も参入障壁も100%撤廃を前提とするため、日本のTPP参加の是非は別に、(日本の)TPP参加が遅れると米国企業などにベトナム消費市場を席巻される恐れもある。
いずれにしても、ベトナム小売形態が現在、主体の伝統的市場(青空市場や路上市場)から、今後はCVSやGMSまたはDPSなど近代的流通形態へ切り替わることに疑いの余地は無いだろう。
③ 【取扱銘柄の動向】
◆フオックホアラバー(PHR) 3月21日終値 27,500 (前週比 +400)
PHRは2012年定時株主総会承認事項を次の通り発表した。
(1)2011年業績及び利益処分
・乾燥ゴム収穫高:2万808トン
・乾燥ゴム外部調達高:8241トン
・販売高:2万5734トン
・販売平均価格:9449万ドン/トン
《連結業績》
・総売上高:2兆5836億2400万ドン
・税引き後利益:8265億7300万ドン
・積み立て金:2273億7100万ドン
・投資:1994億9700万ドン
・配当:3000ドン/株(第1次配当1500ドン/株、第2次配当/株)
(2)2012年業績見通し及び利益処分計画
・乾燥ゴム収穫高:1万9500トン
・乾燥ゴム外部調達高:6000トン
・販売高:2万7500トン
・販売価格:6700万ドン/トン
・総売上高:2兆420億ドン
・税引き後利益(単独):3867億1000万ドン
・積み立て金:1160億1000万ドン
・投資:4570億ドン
・配当:3000ドン/株
DPR以外のゴム各社は1月中旬から季節的要因でゴム樹液の採取をほぼ停止した。PHR、TRC、HRCはゴム樹液採取をそれぞれ4月10日、4月15日、5月上旬から再開予定だ。2~3月はゴム樹液採取がほぼ停止状態だったために、3月のゴム各社は在庫販売を行った。したがって、現在の在庫水準は大幅に低下している。
《ゴム価格(タイプCV、タイプL)、月中平均、出所:マレーシアゴム取引所》

◆ホアン・アイン・ザーライ(HAG) 3月21日終値 29,100 (前週比 +200)
英国の格付け会社フィッチレーティングス(Fitch)は3月14日、HAGが発行する債券の見通し(Outlook)を不動産市況の停滞を理由に「安定(Stable)」から「ネガティブ(弱含み、Negative)」に引き下げた。詳細は以下の通り。
・無担保優先債務格付け:「B」→「B-」
・ドル建て債券の回収率格付け:「RR4」→「RR5」
・外貨建て長期発行体デフォルト格付けとドン建て長期発行体デフォルト格付け:「B」に据え置き
一方、Fitchの格付け見通し引き下げを受け、ボー・チュオン・ソンHAG副社長は、「Fitchが保有資産簿価で債券回収率を計算しているのは不合理。弊社の保有資産(ランドバンクやゴム農園など)の時価評価額は簿価をはるかに上回る」と公式に反論した。また、同氏は、「ポイントは弊社は保有不動産物件を安売りする必要はまったく無いことだ。現在、政府は金融緩和に動き出したところで今後は不動産市況は好転が予想される。不動産価格が上昇するタイミングで不動産販売を強化する方針だ」と述べた。2011年末時点でHAGの現金残高は2兆8960億ドンと潤沢。既に2012年の投資資金も確保済みだ。また、2013年以降は、天然ゴム・サトウキビで売上と収益が見込め、同時に不動産への投資額も減少するため、キャッシュフローは劇的に改善することが予想される。
HAGのフィッチレーティングスへの反論公式文書
URL:http://www.hagl.com.vn/Group_Posts/DetailPost/20120315110817817
◆ホーチミン市インフラ投資(CII) 3月21日終値 28,900 (前週比 +2,300)
CIIは2011年業績(監査済み、連結)を次の通り発表した。
・連結関連企業の収益分:▲61億2700万ドン(未監査業績比:黒字から赤字に転落)
・税引き後利益:1308億ドン(未監査業績比:▲6.1%減)
・少数株主利益等控除利益:1551億ドン(未監査業績比:▲5.2%減)
・1株利益(EPS):2064ドン(未監査業績比:▲5.2%減)
◆FPT(FPT) 3月21日終値 58,500 (前週比 +1,500)
FPTユニバーシティは、ハノイ市ホアラックハイテクパークの敷地内に410平米の樹脂製スケートリンクをオープンした。学生のリクリエーション施設として利用する。スケートリンクは特殊樹脂パネル製でパネル価格は平米当り6000万ドン。表面にワックスを塗り、氷のスケートリンクと遜色ない滑り心地となる。なお、ベトナムにはFPTユニバーシティのスケートリンクのほか、ホーチミン市とハノイ市のバオソンパラダイスと合わせて3ヶ所の樹脂製スケートリンクがある。
FPTの年初2ヶ月の税引前利益は前年同期比20%増となった。売上高は3兆6680億ドン(前年同期比:15%増、計画達成率:102%)、税引前利益が3540億ドン(前年同期比:20%増、計画達成率:102%)、少数株主利益等控除利益は2100億ドン(前年同期比:28%増、計画達成率:NA)だった。
前回の会社訪問(2月22日)時に、ジャパン証券(JSI)からFPTに期末配当および株式分割について質問したところ、「3月の取締役会で決定する」との回答だった。
◆ビナミルク(VNM) 3月21日終値 91,500 (前週比 +0)
VNMは3月23日開催予定の2012年年次株主総会に提出する「業績見通し」を以下の通り発表した。
《2011年業績》
・総売上高:22兆710億ドン(前年比:37%増、年間計画達成率:107%)
・税引き後利益:4兆2180億ドン(前年比:17%増、年間計画達成率:118%)
・配当:3000ドン/株
2011年末時点の現金および現金等価物は2011年年初の2兆2190億ドンよりも、62%増の3兆5970億ドンとなった。VNMは無借金経営の上場会社の一つでもある。
2012~2016年の投資総額は、10兆2750億ドンを想定している。内訳は、ラムソンミルク工場拡大投資額:1370億ドン、新牧場建設投資額:1兆1700億ドンなど。現在、保有乳牛数7000頭を2020年までに3万頭に引き上げる方針だ。また、年次株主総会では2012~2016年までの任期の取締役と監査役の選任を行う。
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