ベトナムマーケットレポート(1月18日作成)
竹内浩一(Japan Securities Incorporatedアナリスト/日本証券アナリスト協会検定会員)
①【市況】VN指数は8連騰
テト(旧正月)前のホーチミン証券取引所のVN指数は1月11日(347.43ポイント)から1月18日(362.66ポイント)まで、15.23ポイント(4.38%)高となった。VN指数は1月6日に直近最安値336.76ポイントを記録した後、現在8連騰中で、その間の上昇幅は25.90ポイント(7.69%)となっている。
2011年を振り返ると、通年GDP成長率は前年比5.89%増。その内訳は農林水産業が4.00%増、鉱工業が5.53%増、サービス業が6.99%増だった。また、小売売上高は24.2%増で、インフレ率を除いた実質では4.7%増に止まった。 また、2011年の貿易収支は、通年輸出額が前年比33.3%増で963億米ドル、同輸入額は前年比24.7%増の1058億米ドルで、通年の貿易赤字は95億米ドルと輸出額の9.9%相当(過去5年間で最低)に止まった。輸出品では、衣料品が140億米ドルでトップ。また携帯電話端末・部品が大きく伸び、原油に次いで3位に入った。
海外直接投資額(FDI)は「認可額」が147億米ドルと、2010年の74%相当に減少した。しかし、認可額よりも重要な「実行額」では110億米ドルと2010年とほぼ同額に達した。FDI国別では香港が30.9億米ドルで1位、日本が24.3億米ドルで2位、そしてシンガポール、韓国と続いた。
2011年の歳出は推計で796兆ドン、歳入は674.5兆ドンで、財政赤字はGDPの4.9%相当(政府目標は5.3%)となった。マネーサプライは昨年末比で10%増(2010年は15~16%増)、銀行貸付は同12%増(2010年は20%増)だった。
12月に小規模銀行3行の合併が発表されて以降、中銀はオープン市場への資金注入量を増やしているため、ベトナムドン金利は安定している。一方で中銀は2012年のインフレ率が10%以下に抑制できれば、現在の預金上限金利14%を10%程度まで引き下げると発言した。 また、現在はテト前という時期柄、中銀は流動性を供給しているが、テト明けには銀行セクターの再編が進むとの見方が強い。
為替相場は1万ドン当たり36.83円(1月11日現地時間13時/YAHOO!ファイナンス)だった。
②【トピックス】2012年外資系ファンドのベトナム株式見通し
現地紙は、「海外機関投資家はベトナム証券市場の将来性に強気の見方で、継続的に資金投入を続けている」と報道している。 現地紙を引用すると、例えば、ロンドン本拠のある外資系ファンドは、「ベトナム証券市場は長期に渡って低迷を続け、VN指数は2007年のピークの32%の水準で推移している。高インフレでベトナム経済は低迷しているが、通貨ドンが安定すれば、2012年は大幅な経済回復が期待できる」と報道している。また、ベトナム・エクイティ・ホールディング・ファンド(Vietnam Equity Holding Fund)では、「2012年夏までにインフレ率が大幅に低下し、金融引き締め政策が緩和されれば、2012年の証券市場は活況となる」とも報道する。 また、韓国の運用会社コリア・インベストメント・トラスト・マネジメント(Korea Investment Trust Management, KITM)社とトンヤン・インベストメント・トラスト・マネジメント(Tong Yang Investment Trust Management)社は、近々にオープンエンド型ファンドを設定するとしている。現在、KITMが運用する6つのファンドの純資産総額は約4億ドルに達する。
現地紙が、今年の外国人投資家のベトナム株への積極性を報道する一方で、昨年(2011年)のベトナム株式市場は「外国人売り」で下げた形だ。下記グラフでは、特に2011年9月には1兆1535億ドン、同12月には1兆2457億ドンの大幅売り超となっている。外国人投資家のベトナム株売りの理由は、昨年前半の米国債務上限問題や後半の欧州債務問題による「質への逃避」だ。例えば、欧州債務問題による欧州系銀行の破綻懸念に備えて、世界の金融機関は手元流動性(キャッシュ)を積み上げざるを得なくなっている。新興国中の新興国であるベトナム株式までは手が回らないという訳だ。テト後も外国人売りは継続するのか、それとも現地紙の報道通りに外国人は買い越しに転じるのか、を見極めたい。 一つ言えるのは、長期的には、おそらく今回の欧州債務危機及び米国債上限問題を契機として「世界経済の中心」は中国及びASEAN地域に移行するということだ。長期的には、ASEAN地域に属して中国と国境を接するベトナム経済がその恩恵を受ける可能性は高い。

③【取扱銘柄の動向】
◆ビングループ(VIC) 1月18日終値 99,500 (前週比 +4,000)
VICは7日、ハノイ市のタイムズシティ都市区(同社の開発プロジェクト)内に、五つ星ホテルクラスの設備を備えるビンメック国際総合病院を開業した。同病院は部屋総数600室、一般の入院用病室や診察室などのほか、VIP用の診察室や首相専用の診察室なども設置されている。国際水準の設備と最新の医療機器を備え、東南アジアでの一流病院となることが期待される。医師は半数以上が医学博士課程を終了した専門医とのこと。 ベトナムでは高齢化社会を迎えた「日本の医師不足」とは全く異なる「低い」レベルで「医療全てが不足」している。例えば、病院のベッド数不足が深刻で、地方の病院では一つのベッドを二人で使用していると聞く。報道されない実質的な医療過誤の多さも実感している。さらに、病院の衛生度や医療レベルにも大きな疑問符が付く。 先週のアジアナビ(1/11号)で、HAG(ホアン・アイン・ザーライ)が本社のあるザーライ省プレイク市にホアン・アイン・ザーライ医薬大学病院を開業したとお伝えした。このHAGが開業した病院は主に、同社従業員や地元ザーライ省の人々の福利厚生に役立てるためだろう。一方、今回、VICが開業したビンメック国際総合病院は首相専用診察室を設置することに象徴されるように、ターゲットはVICの開発した不動産物件を購入するような富裕層だ。 現在、東南アジアのタイ、シンガポール、マレーシアではお金さえ支払えば、待ち時間も無く日本の平均をはるかに超える医療が受けられる。ほとんどの医師は米国で医学教育を受けて英語はペラペラだ。また、日本語に堪能な医師も多い。特に、医療ツーリズムを推進するタイ(バンコク)では、中東や北アフリカからバムルンラート病院(BH)やバンコク・ドゥシット・ホスピタル(BGH)などに来院する患者も多い。中東や北アフリカの現地病院では技術水準が低い為にできない手術、また欧米の病院では非常に高額医療になる疾病を、技術の高いタイの病院で安く受けることができるのがその理由だ。参考までに、日本人駐在員は大きな病気にかかると、日本に帰国して日本の病院に入院するという。この辺は国民性の違いだろう。
VICはビンパール(VPL)を吸収合併後、高級不動産の「ビンコム」、高級ツーリズムの「ビンパール」、ジム・スパ・美容院の「ビンチャーム」、高級ヘルスケアの「ビンメック」の4事業を戦略的に展開し、相乗(シナジー)効果を目指す。
(ビングループの戦略4事業)
- ●VINCOM(ビンコム) 商業不動産(小売スペース:ビンコムセンター、ビンコムメガモール、オフィスビルなど)、住居用不動産(マンション、一戸建て)
- ●VINPEARL(ビンパール) ツーリズム&ホスピタリティ(ホテル&リゾート:ビンパールリゾート、ビンパールラグジャリー、テーマパーク、ゴルフ場、ビーチフロント別荘など)
- ●VINCHARM(ビンチャーム) 美容院、ジム、スパのチェーン展開
- ●VINMEC(ビンメック) 高級医療サービス、ヘルスケアサービスのチェーン展開
◆ベトインバンク(CTG) 1月18日終値 22,000 (前週比 +3,300)
CTGは2011年業績及び2012年業績目標を以下の通り発表した。
- 《2011年業績》
- ・税引き前利益:8兆1050億ドン(前年比:76.0%増、年間計画達成率:158.9%)
- ・純資産利益率(ROA):1.96%
- ・株主資本利益率(ROE):25.4%
- ・配当:額面比20%
- ・不良債権比率:0.74%(2011年末)
- 《2012年業績目標》
- ・税引き前利益:9兆7260億ドン(前年比:20%増)
- ・総資産:前年末比20.0%増
- ・不良債権比率:3.0%以下
- ・自己資本比率:10%
CTGは、ドイツ系卸売り大手のメトロ・キャッシュ&キャリー(メトロC&C)とカード決済サービスでの提携を発表した。これにより、メトロC&Cでは今まで現金支払いのみだったが、クレジットカードでの支払いが可能になる。 メトロC&Cはベトナム国内で17店舗(現在)を展開し、今後3~5年間で店舗数を2倍にする計画だ。 ベトナムの消費市場では依然、伝統的マーケットが主流だ。しかし、伝統的マーケットには、衛生面の懸念・価格交渉の煩わしさ・品質の不安定性などが指摘され、次第にスーパーマーケットなど近代的マーケットが人気を集めつつある。例えば、大都市部にあるBIGC(ビッグシー)などのスーパーマーケットは、週末には買い物客が溢れている。一方、メトロC&Cのようなホールセールクラブ(会員制倉庫型店舗)も同様に、買い易さと割安な価格から、卸売り業者・富裕層・外国人等の人気を集めている。
◆ホアン・アイン・ザーライ(HAG) 1月18日終値 18,300 (前週比 +0)
HAGの取締役会は、2012年の利益計画と投資計画を以下の通り発表した。
《2012年利益目標》 ・税引き前利益:1兆7000億ドン(前年比変わらず) 《2012年の計画・予定》 (ゴム事業) ・ベトナム、ラオス、カンボジアのゴム農園面積を合計5万1000ヘクタールとする。 ・2012年7月にアタプー(ラオス)のゴム農園で初の天然ゴム樹液を採取予定。 (サトウキビ事業) ・農園面積合計5000ヘクタールのサトウキビ栽培・収穫 ・2012年第4四半期に製糖工場が稼動 (水力発電所事業) ・2012年第1四半期に第2バトウック水力発電所(総出力:80MW)及び3Bダクシロン水力発電所(総出力:19.5MW)が稼動開始。 ・第一バトウック水力発電所プロジェクト(総出力:60MW)、第2ナムコン水力発電所プロジェクト(総出力:66MW)を起工。 (鉄鉱石採掘・加工事業) ・生産・販売量:50万トン ・2012年第4四半期にラオスで鉱産物採掘・加工を開始。 (不動産事業) ・2012年第1四半期にフーホアンアイン・プロジェクト(第1期)の第5区が完成予定。第2四半期にアンティエン・プロジェクトが完成予定。 ・進行中の不動産プロジェクト:フーホアンアイン・プロジェクト(第2期)、タインビン・プロジェクト、インコメクス・プロジェクト、フックバオミン・プロジェクト。
◆ベトコムバンク(VCB) 1月18日終値 21,700 (前週比 +1,100)
米格付け大手のS&P社は13日、VCBがみずほコーポレート銀行による新株発行増資を完了させたことを理由に、VCBの見通しを「ネガティブ(弱含み)」から「安定」に引き上げた。また、VCBの長期債信用格付けは「B+」で据え置き、非常時に政府が支援する可能性を除いた信用力評価(スタンドアローン評価)を「B」から「B+」に引き上げた。S&P社アナリストは、「みずほコーポレート銀行がVCBの株式15%取得したことにより、VCBは銀行サービス向上やリスク管理力を高め、資金流動性を改善させることが期待される」と分析している。また、S&P社はベトナムのカントリーリスクが改善した場合、またはVCBの貸し出し資産の質や利益水準、資金流動性などが改善した場合は、さらに同行の信用格付けを引き上げる可能性があると示唆した。
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