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ベトナムマーケットレポート(1月11日作成)

竹内浩一(Japan Securities Incorporatedアナリスト/日本証券アナリスト協会検定会員)

 

 

① 【市況】下落トレンドが継続

年初、ホーチミン証券取引所のVN指数は2011年末(12月30日)の351.55ポイントから1月11日の347.43ポイントまで、▲4.12ポイント(▲1.17%)安となった。1月6日には直近最安値の336.76ポイントを記録している。高金利が続く中、少なくともテト(今年は1月第4週)明けまでは商いは活発化しそうにない。

そうしたなかで、ホーチミン証券取引所(HOSE)は1月5日、新株価指数の「VN(ブイエヌ)30」算出方法を発表した。「VN30」は、ホーチミン市場上場銘柄の内、時価総額が大きく流動性が高い30社の時価総額から算出する。「VN30」採用銘柄選定では、時価総額が小さく流動性の低い銘柄を除外し、現在のVN指数よりも上場企業の株価と連動する動きを目指した。また、「VN30」採用銘柄には注意銘柄、取引中止銘柄、上場期間が6ヶ月未満の銘柄は採用されない。採用銘柄は6ヶ月毎(1月・7月)に見直される。

《「VN30」採用銘柄算出方法》
(1) 時価総額上位50銘柄を選定
(2) 上記50銘柄から浮動株(市場に流通している株)比率が5%以下の銘柄を除外
(3) 直近6ヶ月の1日当り売買代金に基づいて銘柄をランク付けする。
・1~20位の銘柄:VN30に採用する。
・21~40位の銘柄:上場期間の長い銘柄を優先する。
・41位以下の銘柄:除外する。
以上の基準から30銘柄を選定し、浮動株基準時価総額加重株価指数を算出する。 VN指数の算出は今年2月6日から開始される予定だ。

参考までに、ホーチミン証券取引所がテスト選定した30銘柄は以下の通り。

ホーチミン証券取引所のテスト選定30銘柄をみると、銀行のVCB(ベトコムバンク)、CTG(ベトインバンク)、EIB(エクシムバンク)、ミリタリバンク(MBB)、保険のBVH(バオベトホールディング)、鉄鋼のHPG(ホアファットグループ)、コーヒーのVCF(ビナカフェビエンホア)等のベトナムを代表する大型銘柄が外れていることが印象的だ。これらの銘柄は浮動株比率5%基準で除外されたものと思われる。一方、テスト選定30銘柄中の9銘柄(30%)が額面割れ(1万ドン以下)銘柄であることにも疑問を抱かざるを得ない。なお、ホーチミン証券取引所は外国人投資家用の新株価指数を近々に発表するとしている。

為替相場は1万ドン当たり36.59円(1月11日現地時間13時/YAHOO!ファイナンス)だった。

 

② 【トピックス】ベトナムの携帯電話事情

新興国では固定電話を飛び越えて、携帯電話が急激に普及している。なかでもベトナムでは携帯電話が驚異的な速さで普及した。そのため、生活実感と統計データの整合性が取れていないほどだ。 ベトナムの携帯電話普及率は2003年にはわずか3.4%だったが、2010年8月末には161.6%と7年間で約47.5倍になっている(出所:統計局)。これは、通信インフラ整備、低価格携帯機種の登場、モビフォン(未上場)やベトテル(未上場)など各通信キャリアの通話料金値下げ競争に加えて、携帯電話が特に人口の多い若年層のハートを捉え、「新しい(都市型)ライフスタイル」に欠かせないアイテムになったことによる。 但し、普及率161.6%という驚異的な数字はSIMカードベースだ。日本と異なって(実は日本が世界の趨勢と異なるのだが・・・)、ベトナムの携帯電話のほとんどはSIMカードを利用するプリペイドカード方式だ。そのため、1人で複数のSIMカードを保有することも多い。したがって、統計上は、携帯電話を保有しているのは総人口8600万人の内、約4500万人で普及率を50%強とする場合もある。但し、ホーチミン市やハノイなどの大都市圏で生活している限りは、携帯保有率50%強は生活実感よりもかなり矮小化されている、と感じる。ベトナムの都市部(ホーチミン市、ハノイ、ダナン、ハイフォン、カントーなど)と農村部の経済格差は大きい。

アップル社(米)のiphone、製造はフォックスコン社(台湾)が中国で行う。ベトナムでは中国製の偽iphoneも多く流通している。

ヤフー社の調査では、ベトナムの携帯・インターネットサービスに対する一人当たり支出は月平均24米ドルと、ASEAN諸国のなかで最も多かった。一方、携帯電話契約者数では、中国、インドネシアに次いでベトナムは3番目の規模だ。また、携帯電話からのインターネットアクセス数ではマレーシアに次いで2位。全国のインターネット利用者の内、約3分の1が携帯電話を通じての利用者だという。ベトナムのインターネット利用者像をプロファイリングすると、ほとんどが15~24才の男性で、彼らの多くが200~400万ドン(約95~190米ドル)のスマホを利用する。提供されるサービスに対しての利用料はかなり廉価だ。携帯電話機種はノキアが最も人気があり、シェアは51%。サムソン(シェア16%)、LG(7%)、アップル(6%)、ソニーエリクソン(5%)、Qモバイル(4%)、ブラックベリー(3%)と続く。 平均所得の低いベトナムでは携帯電話は、日本製やイタリア製の高級スクーターと同じく「ステータスシンボル」としての一面が強く、5万円以上の高機能機種を買う人も多い。ハノイ在住の日本企業駐在員の大多数が約30米ドル相当の電話とSMS(ショートメッセージサービス)のみ可能なシンプルな携帯電話を購入しているのとは実に対照的だ。私が知る限り、日本企業駐在員の中で、KDDIなど通信企業駐在員はスマホ(多機能携帯電話)を保有されていたが、ほとんどの方がスマホは操作が面倒くさい、PCが会社にも自宅にもあるので必要無い等の理由で従来型の携帯電話を使用している。

先日、著者(ハノイ在住)が自宅近くの散髪店(美容院?散髪一回が日本円400円でとても安い)で散髪していた時、隣の若いベトナム女性が髪をセットしてもらっている合間に、タブレット型PCでE(電子)ブックを読んでいた。彼女は「ゴルゴ13」の漫画本を持参して読んでいた著者にタブレット型PCに表示されたEブックを「さりげなく自慢げ」にみせてくれた。ベトナム都市部の若者にとっては、アップル、HTC、サムスンなどのスマホやタブレット型PCのipad(アップル)・ギャラクシーTab(サムソン)などは憧れのアイテムだ。

参考までに、昨年12月13日にビナフォン(ベトナムの携帯キャリア)が発表したアップル社iphoneの最新機種iphone4S(2011年10月初旬発売)の16GB、32GB、64GBの価格はそれぞれ1560万ドン(約750米ドル)、1800万ドン(約860米ドル)、2050万ドン(約984米ドル)だった。ベトナムの工場ワーカーの給与を150米ドルと仮定すると、ほぼ半年ほどの給与分ということになる。今思えば、「自慢げ」なのも無理はない。

 

③ 【取扱銘柄の動向】

◆FPT(FPT) 1月11日終値 49,500 (前週比 +300)

FPT子会社のFPTソフトウェア社は、日本の日立グループと包括的な相互協力覚書(MOU)を締結した。両社はベトナムでUNIPROVE/ASシステム(大学向け経営情報システム)の開発と販売事業の分野で協力を予定している。

FPT子会社のFPTトレーディング社が販売するスマホ(FPTフォン)

同システムはFPT子会社FPTユニバーシティーが経営するFPT大学に導入され、FPTソフトウェア社がFPT大学内の環境に合わせてシステム改良・追加をする計画だ。UNIPROVE/ASシステムは、両社が2005年末から共同研究を続けており、現時点で日本国内の大学15校が導入している。FPTと日立はソフトウェアソリューション分野で協力する他、教育、スマートシティ、地理情報システムなどの分野でも共同展開を予定している。現在、FPTソフトウェア社の日立グループへの売上高は、日本での売上高全体の18%を占めている。

FPT

 

◆ホアファット・グループ(HPG) 1月11日終値 15,600 (前週比 -1,000)

HPGは2011年の業績予想を以下の通り発表した。 《2011年業績予想》 ・鉄鋼販売量:65万トン(前年比12.0%増) ・鉄鋼部門の売上高:11兆ドン ・鉄鋼部門の税引き後利益:7000億ドン チャン・トゥアン・ズオン副会長兼社長は、「2011年の国内鉄鋼シェアは2位で、年間目標を達成した」と述べ、景気低迷の逆風でも好業績を達成できた理由を以下のように分析している。 ・原料の鉄鉱石の安定調達 2011年、HPGは自社保有の鉄鉱石鉱山で鉄鉱石16万トンを採掘した。HPGはフートー、イエンバイ、ラオカイ、ハザンに鉄鉱石鉱山を有しているほか、チエンティン、トゥンバ、サンタン鉱山での開発プロジェクトを進めている。 ・ハイズオン省ホアファット鋳鉄生産連合区の2011年利益が前年比3倍の3000億ドンに達する見込み。 ・鉄鉱石から製品までの一貫生産で、鉄スクラップを原料とする他社に比べて、鉄鋼製造原価が5~7%低く、市場競争力が強かった。

HPG

 

◆フオックホアラバー(PHR) 1月11日終値 26,700 (前週比 -100)

PHRは2011年の業績情報を以下の通り発表した。 《2011年業績情報》 ・乾燥ゴム収穫高:2万138トン(12月24日時点) ・乾燥ゴム収穫高(12月単月):650~700トン超を予想 ・乾燥ゴム外部調達高:8011トン(12月24日時点) ・乾燥ゴム収穫高(外部調達を含む):2万8149トン(12月24日時点) ・ゴム樹液販売量:2万5254トン(12月24日時点) ・予想売上高:2兆4000億ドン ・予想利益:8000億ドン(年間計画達成率:133%)

乾燥ゴム収穫高(外部調達を含む)は2万8000トン超で前年比で約4%減、ゴム樹液販売量は前年から16%減の2万9000トン程度となりそうだ。ゴム樹液収穫高が前年比で低迷している理由は、ゴム農園の老朽化による。2011年は老木化した584ヘクタールのゴム農園のゴム木が伐採された。2012年も老木化したゴム木の伐採で農園面積は縮小見込みだ。

天然ゴム樹液の採取(PHR)

PHRの乾燥ゴム製品

そうしたなか、2つの新ゴム農園プロジェクトが進捗している。2つの新ゴム農園とはカンポンソン農園(PHR100%出資)とユニオン・クラティ農園(PHR30%出資)だ。 カムポンソン農園(表1)の農園面積は2011年末で5,064ヘクタール、2012年末に7,064ヘクタールまで拡大見通しだ。同農園では、2015年からゴム樹液収穫が開始される。一方、ユニオン・クラティ農園については、ほとんど情報公開されていないが、2010年にゴム苗木が植樹されているため、2016年以降にゴム樹液収穫が開始される見込みだ。つまり、長期的には新ゴム農園プロジェクトによって、PHRのゴム樹液採取(生産)見通しは明るい一方で、短期的には(少なくとも今後3年間)はゴム樹液採取可能な農園面積は減少が予想される。

一方、上昇を続けてきた天然ゴム価格だが、昨年年初をピークに2011年の天然ゴム価格は大きく下落した。下記チャートはマレーシアゴム取引所(Malaysian Rubber Board)の2011年の天然ゴム価格推移だ。ゴムは「産業農作物」であり、世界景気、特に自動車産業の活況度合いに価格が大きく左右される。したがって、世界第一の自動車生産国・中国の景気動向が大きく天然ゴム価格を支配し、PHRの業績へ影響を与えるだろう。

 

◆ホアン・アイン・ザーライ(HAG) 1月11日終値 18,300 (前週比 -700)

HAGは1月2日、ホアン・アイン・ザーライ医薬大学病院の開業を発表した。 ・場所:ザーライ省プレイク市 ・敷地面積:5ヘクタール(東京ドーム約1.07個分) ・建設面積:1万4000平米 ・投資総額:2000億ドン ・建設は第1期と第2期に分けて実施。 ・第1期(完工済み):総合内科、総合外科、心臓科、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科 ・第2期:2013年に完工予定、完成後の総ベッド数は300ベッドを予定。ホーチミン市医薬大学と締結した提携契約によると、HAGはインフラ・医療機器の設置などを担当、医師・看護婦及び経営はホーチミン市医薬大学が担当することになっている。

また、同社は12月末に起債5000億ドンに成功した。この債券は期間3年、クーポンは1年目が18%、その後は変動金利(12ヶ月平均定期預金金利+4%)となる。

最後に、同社のドアン・グエン・ドゥック会長は2011年末時点でベトナムで第2位(保有株式の時価総額:4兆3480億ドン)の株式長者にランクインした。第1位はビングループのファム・ニャット・ブオン会長(保有株式の時価総額:16兆7640億ドン)だった。保有するHAG株式の大幅下落で保有株式の時価総額は半減したものの、依然、ベトナム有数の資産家だ。

HAG

HAG不動産社のジェネラルディレクター

 

 

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2012.01.13 » アジア現地情報/投資関連情報 印刷 印刷