日本アジア証券が運営するアジア情報のポータルサイト「アジアナビ」。ショッピング、食、最新トピックス、投資情報などアジアの最新情報を配信。

ベトナム株式相場はどこに向かうのか!?

 

VN指数は、5月12日から10営業日連続安(20%下落)となり、5月の第4週の週末にかけて反発、26日(木)、27日(金)の上昇率は6.3%となった。急落の背景は、4月26日発表の消費者物価指数(CPI)上昇率が前月比3.32%となり、2008年5月以降35ヶ月ぶりに3%を超えたことによるインフレ懸念が背景となっている(前年同月比17.5%上昇)。

ベトナムは、2007年の20%を超えるハイパーインフレとその後のリーマンショックの余波で株価は高値1170.67ポイント(2007年3月12日)から235.5(2009年2月24日)へと約80%下落した。その悪夢を繰り返さないために、インフレ対策として、5月1日に1回目の金利引き上げ、4日に2回目、そして17日に公開市場操作を通じてリバースレポ金利を従来の14%から15%としたことから下落に拍車がかかった。現在、金融機関の事業会社への貸付金利が20%、証券担保融資が25~27%という高金利で地元投資家の投資意欲は減退し、売却を急いでいる。

VNインデックスは、チャートの節目420ポイントを割ったことで、400ポイント割れへと一直線に急落。現況はベトナム株式市場の危機とは呼べるかもしれないが、決してベトナム経済の危機ではない。なぜなら、ベトナム経済の要となっているドルドン相場が安定してきており、外国人を含めたベトナム株売り一色とはなっておらず、このパニック売りが止まれば、6月には大きく反発する可能性もあろう。

ベトナムは強いインフレ懸念に翻弄されている。アジア圏を含めた世界各国の中でもベトナムの4月のCPIは前月比3.32%、前年同月比17.5%と非常に高い。3月1日の電気料金値上げ(15.28%)と2月24日、3月29日のガソリン価格値上げ(計約25%)、食料品の上昇が影響している。5月に入ってからの3回の利上げにより、金融機関の事業会社への貸付金利や証券担保融資金利が高止まりしており、現在は株を買うリスクが大きく現地投資家の買い意欲の回復にはしばらくの時間が必要となっているからだ。

高インフレの背景は、ベトナム人が歴史的に金やドルを中心とする外国為替に強い嗜好を有しており、ドンを交換しUSドルや人民元を買い付け保有する傾向があることだ。これは外国商品の輸入にもつながり、貿易赤字の温床になってきた。ベトナム北部は世界の輸出大国中国と国境を接しており、貿易赤字の105%が対中貿易となっている。しかしながら、人民元高によって貿易赤字は若干好転の兆しが見えてきており、為替相場は2月11日の9.3%の切り下げ以降対ドルベースで安定推移している。実質的な変化としては、首都ハノイのハンザ市場周辺で横行していた非公式両替店は、表通りの営業が出来なくなっているなど、当局のドン安定化への姿勢も強固だ。25日発表の5月のCPIは前月比2.2%となり、6月は同1%台へと下落するとの予想が出ており、6月には相場反転の可能性もある。

ベトナムホーチミン株式市場の時価総額は、3兆円足らずで流動性は低いため、一方向に動く相場展開になりやすい。現在の株式市場は振り子がネガティブに振れているが、アジア市場でもっとも低いPER水準9.54倍(ブルムバーグ予想)などのファンダメンタルが見直される可能性がある。

インフレ懸念から中国も人民元高に舵を切った。中国に直接投資した外国企業がベトナム工場へシフトする呼び水になるものと思われる。

前述したようにVN指数が底値をつけたのは、2009年2月24日の235.5である。株価は史上最高値1170.67ポイント(2007年3月12日)から約80%下落した。これを日経平均に当てはめると、1989年12月末の38915円から7783円まで2年足らずで暴落したことになる。日経平均が7000円台の水準を経験したのは10年以上が経過した21世紀に入ってからだ。このことからもベトナム市場のボラ

ティリティの高さがわかろう。VN指数は、2009年2月に底値を付け、上昇に転じた。現時点は底値からわずか2年余りを経過しているに過ぎない。タイ市場を例に取ると、ベトナムは国境を接しており労働者の質において遜色はない。タイで日産はマーチの日本向け生産を始めるなど自動車産業では先進国なみだ。そのタイ証券取引所のSET指数は、2008年5月に875ポイントをつけたが、日本でも大きく報道された政治混乱などで2008年末には半値以下の400ポイント程度まで急落した。しかし、今年4月にはSET指数は1100ポイントまで急騰している。市場規模がタイとベトナムでは10倍の差があるので同様に比較することはできないものの、逆を言うと10分の1のベトナム市場は上昇に転じた際の上昇スピードはかなり大きくなる可能性がある。

 


佐藤光太郎(さとう・こうたろう)
早稲田大学卒。04年東海東京証券アジア社長、08年10月より当社外国エクイティ部長、10年10月に商品本部長就任。ブルームバーグテレビにて5年間外国株式解説を担当、 TBS『儲かりマンデー』での外国株の紹介、香港駐在時に朝日新聞アジア版へ『大人の金融論』を連載するなど、一貫して外国株式の普及に努める。96年、米国株式の店頭取引を開始。02年、香港株式の国内店頭取引を業界の先陣を切って開始。09年、ベトナム株式国内店頭取引を推進、日本でベトナム株式の同一日売買を初めて可能とするなど、日本における屈指の外国株式のエキスパート。

 

【関連記事】
狼少年、あらわるあらわる、米国株はお嫌い!

2011.06.02 » アジアのプロが語る 印刷 印刷